大腸CT検査(CTC:CTコロノグラフィ)とは
大腸CT検査は、内視鏡を使わずに大腸の内部を調べる新しい検査です。
大腸を炭酸ガスでふくらませ、最新のCT装置で撮影することで、大腸の状態を3D画像で詳しく観察できます。「大腸の検査はつらい、危険、怖い」と感じている方にも受けやすい検査で、大腸内視鏡(大腸カメラ)に比べて身体への負担が少なく、安全性の高い方法です。
当院では2003年5月から国内に先駆けて大腸CT検査を導入し、現在は高精度な80列マルチスライスCTと、薬事承認された造影剤を用いたタギング法で、より精度の高い検査を実施しています。
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大腸CT用経口造影剤
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大腸CT用炭酸ガス送気装置
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80列マルチスライスCT装置
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3D医用画像処理ワークステーション
大腸CT最新技術
従来、大腸CT検査は大腸内視鏡と同じく腸を完全に空にする必要があり、多量の下剤(約2,000ml)を服用していました。しかし、タギング法により、下剤の量は約1/10(約200ml)に減らすことが可能になりました。
タギング法とは
経口造影剤を用いて大腸内の残渣(残便や残液)を標識する方法です。大腸CT検査特有の技術で、以下のメリットがあります。
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少量の下剤で検査可能
従来よりも負担が大幅に軽減します。
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病変と残渣の判別が容易
残渣を造影剤で高吸収に標識することで、病変を見つけやすくなります。
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デジタルクレンジングが可能
画像処理で標識された残渣を取り除き、よりクリアな画像を再構築できます。
タギング法(Fecal Tagging:便標識)
受容性向上
経口腸管洗浄法からブラウン変法へ。
下剤服用量を1/10に減量。
少量の下剤で大腸CT検査が可能

残渣の判別
薬事承認された硫酸バリウムを
使用して残渣を高吸収に標識する
ことで病変と判別する方法。

デジタルクレンジング
クレンジング処理前

クレンジング処理後

標識された残渣をクレンジング処理で、埋もれていたポリープが描出されます。
大腸がん検診の現状
食生活の欧米化に伴い、日本でも大腸がんにかかる人が増加しています。それに伴い、大腸がんで亡くなる方も増えています。
大腸がんは、早期に発見し治療すれば命を落とすことが少ないがんです。
しかし、最新のがん統計(2023年推計)によると、
- 大腸がんの罹患数は男性で第1位、女性で第2位、
- がんによる死亡数は男女ともに第3位となっています。
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大腸がん検診(便潜血検査)の受診率が依然低いこと
全国平均:男性約45%、女性約40%(2022年) -
便潜血検査で陽性となった方の2次検査受診率が約55%と十分でないこと
早期発見のためには、便潜血検査を受けること、陽性なら必ず精密検査を受けることが大切です。
大腸精密検査の比較
2次検査としては内視鏡検査が主流ですが、一般的に「つらい検査」というイメージが強く浸透しているのが現状です。そのため、2次検査の受診率を向上させるには、受診のハードルを下げることが重要です。当院では、比較的低侵襲で受診者の負担が少なく、受け入れやすいというメリットを持つ大腸CT検査に積極的に取り組んでいます。
大腸CT検査 | 大腸内視鏡検査 | |
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下剤服用量 | 約200ml | 約2,000ml |
検査時の苦痛 | 少ない | 挿入時に痛みがともなうこともある |
病変の検出能 |
・問題となる6mm以上のポリープの検出能が確立している ・平坦な腫瘍や小さなポリープは発見しにくい |
・平坦な腫瘍や小さなポリープも発見できる |
ひだの裏側 | 観察できる | 内視鏡の死角がある |
狭窄がある場合 | 内視鏡の挿入が困難な方でも 検査ができる |
狭窄部位より奥は検査ができない |
病変の組織採取 | できない | できる |
他臓器の情報 | 腹部臓器の情報が得られる | 得られない |
医療被曝 | ある ※必要最低限の被曝です | ない |
こんな方におすすめ | ・高齢の方などで大腸内視鏡検査がつらい方 ・大腸内視鏡の挿入が困難だった方 ・抗血栓薬を内服中の方 |
・症状がある方(血便・貧血・慢性的な便通異常など) ・家族に大腸がんの既往がある方 ・過去に大腸ポリープを指摘された方 |
大腸CT検査の流れ
検査前日は検査食をお召し上がりいただき、大腸CT用バリウム・下剤などを服用いただきます。検査当日は、腸の動きを抑える筋肉注射を実施した後、お尻から炭酸ガスを注入して腸を膨らませ、うつぶせとあお向けの2つの体位で撮影します。検査自体は約10分程度で終了します。撮影後は、専用の3D医用画像処理ワークステーションで画像処理を行い、診断します。
検査前日(ご自宅)
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検査前日は、検査食を食べていただきます。
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案内に従い大腸CT用バリウム・下剤等を服用していただきます。
検査当日(病院)
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指定の時間までに来院してください。
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診察をします。
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CTにて撮影を行います。検査時間は10分程度です。
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画像確認後、結果説明させていただきます。

使用する評価診断画像
仮想切標本展開画像(VGP:Virtual Gross Pathology)
大腸の粘膜面をマクロ視点で近似した画像です。全大腸の粘膜を一望できるため、隆起や粘膜の途絶の有無を静止画像で確認する際に有効です。
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全粘膜面を表示したVGP
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クレンジング処置後のVGP
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2体位比較評価
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クレンジング処置後のVE+MPR
仮想注腸像(VR:Volume Rendering)
注腸造影検査に近い画像で、大腸全体の外観を確認します。
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2体位比較評価
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VE+MPR像
大腸の管腔内と管腔外の情報を同時に観察し、病変と残渣を識別します。
2種類の動画で動きを比較しながらご覧ください。
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2体位比較評価
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仮想内視鏡像(VE:Virtual Endoscopy)
大腸内視鏡に近い画像で、腸管内腔を観察し、腸管粘膜面の変化を確認します。
2種類の動画を比較しながらご覧ください。
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2体位比較評価
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実際の症例(大腸CT検査、内視鏡検査、その後の治療)
症例 30代 女性
近医より便潜血陽性で紹介。大腸CT検査でS状結腸にポリープ指摘される。 大腸内視鏡検査で指摘されたポリープを確認、内視鏡下粘膜切除術(EMR)で切除。

症例 70代 女性
近医より便潜血陽性で紹介。大腸CT検査で下行結腸に平坦隆起病変を指摘される。 大腸内視鏡検査で指摘された平坦隆起病変(早期癌)を確認、外科的腹腔鏡下切除術を実施。

お問い合わせ
お電話
0586-45-4511
受付日時:月~金曜日 13:30~17:00
- 上部内視鏡・下部内視鏡・大腸CT検査を受けられる方は、新型コロナウイルスに感染した場合、自宅待機解除日から2週間は検査できません。検査予約をしている場合は下記へご連絡いただき予約変更をお願いします。