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診療体制

胃の腹腔鏡手術

適応・変遷

図⑰
胃の腹腔鏡手術

2007年に胃がんに対してこの術式を導入した当初は、お腹の中で胃を栄養する血管あるいはリンパ節などを切除(リンパ節郭清)したのちお腹に6~7cmの小開腹創を置き、そこから胃・リンパ節をお腹の外に引き出し胃を切除したあと残った胃と十二指腸あるいは小腸と繋いで(吻合)からお腹の中にもどしていました。この術式を腹腔鏡補助下胃切除術(LADG)と言います。
2008年から藤田保健衛生大学(現 藤田医科大学)医学部 上部消化管外科教授の宇山先生(専用ページ参照)が定期的に来院されるようになり、胃やリンパ節の切除から吻合まですべてお腹の中で行うようになりました。そしてお腹の中で切除された胃やリンパ節はお腹の中で袋にいれて臍(へそ)の3cm位の傷からお腹の外に引き出しています。この術式を完全腹腔鏡下胃切除術(LDG)と言いますが、従来の腹腔鏡補助下胃切除術(LADG)に比べて傷がさらに小さくなることによりさらに整容性が改善され、また痛みなど体への負担(侵襲)が軽減され患者さんのより早い回復が可能となりました⑰⑲⑳㉑。

図⑱

図⑲

通常の腹腔鏡下胃手術はお腹に5~6か所の穴をあけて行います

図⑳

腹腔鏡下胃手術の傷跡です

図㉑

開腹胃手術の傷跡です

腹腔鏡手術と開腹手術ではこのように傷跡の違いがあります。

この術式に対する現在の当院での適応はすべての胃がんの患者さんに行えるわけではなく、stageIA、IBなどの比較的早期の胃がんの患者さんに主に行っています。これまで当院で行った腹腔鏡下胃切除は約500例であり、内視鏡外科学会の技術認定医4名がすべての腹腔鏡下の胃がん手術に携わっています⑱。
また、大腸がんの腹腔鏡手術と同様、何回も開腹手術の経験がある方、あるいは胃がんが進みすぎている方などは腹腔鏡手術が行えないことがあります。

実際に胃がんの腹腔鏡でどんなことを行うの?

胃がんの手術は基本的に2種類の手術があります(状況によってはさらに別の方法を選択する場合もあります)。一つは目は幽門側胃切除術(胃の3分の2切除)、二つ目は胃全摘術です。幽門側胃切除というのは胃の3分の2を切除する手術です。胃の周囲のリンパ節と一緒に出口に近い方の3分の2の胃と十二指腸を一部切除する方法です㉒㉓。手術は切除だけでは終わりません。切除した後に食べ物の通り道を確保しなくてはなりません。切った胃と腸をつなげてあげる必要があります。それを再建と言います。幽門側胃切除の場合は再建の方法が3パターン(ビルロートⅠ法㉔、ビルロートⅡ法㉕、ルーワイ法㉖)あります。今ではどの方法でも腹腔鏡で行っています。胃全摘術の場合は、胃の周囲のリンパ節と、胃を全部、さらに食道の一部、十二指腸の一部を併せて切除します㉗㉘。この場合の再建方法は、ルーワイ法という方法で行われ、食道と小腸、小腸と小腸をつなげるようにします㉙。これもすべて腹腔鏡で行うことができます。

腹腔鏡下幽門側胃切除術

図㉒

図㉓

幽門側胃切除は、十二指腸の一部と胃の出口側3分の2、周りのリンパ組織を併せて切り取ることで、がんの部分を取り除く手術です。

腹腔鏡下幽門側胃切除術の再建方法

図㉔

図㉕

図㉖

残った胃の大きさによって十二指腸と胃をつなぐ場合(㉔)と小腸と胃をつなぐ場合(㉕㉖)があります。

腹腔鏡下胃全摘術

図㉗

図㉘

胃全摘術は、十二指腸の一部、胃を全部、食道の一部、周りのリンパ組織を併せて切り取ることで、がんの部分を取り除く手術です。

腹腔鏡下胃全摘術の

図㉙

食道と小腸をつなぎます(㉙)

当院では、患者さんの身体の状態や希望などから、最も適切な手術方法を選択するようにしていますので、手術方法の選択に関しては遠慮なく医師にご相談ください。